猫バカの文豪たち
亡くなった愛猫を剥製にした谷崎潤一郎氏や、「心の支えは猫」と言って憚らなかった三島由紀夫氏など猫バカな文豪は多いです。夏目漱石氏などは愛猫が亡くなった時は知人に喪中はがきを出したというエピソードも残っています。
しかし、猫好きな文筆家のエッセーとしては大佛次郎氏のものが読んでいてほっこりします。奥様やお手伝いさんが主に面倒を見ていたとしても、お世話をした猫さんの数は実に500匹にのぼり、さすがにどうにもならなくなったようで上限を15匹にしたとか。(それでもちょいちょい超過していた模様)
この仕事部屋と来たら!この写真を見るだけで「ああ、この人は猫バカだな」と分かりますね。流行作家さんなので財力もあったと思うのですが、羨ましい限り…
「猫は僕の趣味ではない。いつの間にか生活になくてはならない優しい伴侶になっているのだ」
引用:「黙っている猫」 大佛次郎
猫バカさんだったら分かりますよね、この感覚。浴槽の蓋の上で気持ちよさそうに猫が寝ていたので、遠慮して湯船に浸からなかったとかは本当に猫バカさん。
仕事部屋には生きている猫は入れなかったそうですが、いくつもの猫の置物に囲まれていたとか。
猫捨てとの攻防
しかし、「大佛先生は猫好きだから…」という風評もあってか、大佛氏の家に猫を捨てていく不逞の輩が後を絶たなかったようです。大佛氏は知らない猫の鳴き声が聞こえるだけで執筆していられなくなるほどの猫バカでおられたので、庭に投げ入れられた猫も出来るかぎり面倒を見ていたようです。
当時は去勢・避妊などはされておらず、家の中と外を好き勝手に出入りしていたでしょうから、増えるのは分かるのですが…
また猫をバスケットに詰めて、わが家に投げ込んで行った。かなり育った猫で、バスケットに画用紙の手紙が付けてある。
「この猫をあなたの家族にしてお飼いください、お願いします」
そしてどうしたつもりか、猫の顔を絵に描いてあった。
またかと私は嘆息し、終日、沈んで気持ちであった。
(中略)
世間には、他人の老後の平和をみだして平気でいられる人間があるのである。それが、若い女で幸福な家庭のひとらしい。
引用:「ここに人あり」 大佛次郎
猫を保護したことのある人はお分かりでしょうが、猫好きでも「猫を保護したい」人など居ないのです。猫好きなことと、猫を保護することは違うのです。「猫好きな人が拾ってくれる」というのは幻想です(猫好きで無猫の人が拾ってくれるレアなケースはありますが)
泣いた「オレ、ハチ」
X(旧Twitter)で私が一方的にフォローしている「おねっさん(@LuckyStar111222)」のブログを何気なく読んだのですが、これが相当な破壊力で…(以下のブログは電車の中など人目のあるところで読むことはオススメできません)
オレ ずっと しかくいへやにいた。
まいにち ほんのすこし あかるくなって
まっくらになるのくりかえし。
5ねんかん。(中略)
あるひ、かいぬしのひと オレのこといらないって
ほけんじょのところに いった。
何回読んでも泣けるし、ハチくんの顔がすっかり変わっていく過程で口元が緩んでしまいます。
個人的にはここで涙腺が崩壊しました。
だいじの子は たくさんさわってもらえる。
だいじの子は たくさんおはなしもする。
だいじの子 いそがしい!
ツラい5年間だったぶん、これから先はずっと「だいじの子」になって過ごして欲しいと心から願っています。
それにしてもいい顔してるなあ、ハチくん!
「だいじの子」の見送り
そんな誰かの「だいじの子」も今年は残念ながらたくさん見送りました。
特に年末になってX(旧Twitter)のフォロワーさんの猫ちゃんたちも体調を崩して虹の橋へと旅立っていく子が多かったように思います。
古くからの猫友さんとこの猫ちゃんで、お庭に生後1ヶ月270グラムでやってきたチビ時代からずーっと知っている猫ちゃんもリンパ腫と膵炎で闘病していましたが旅立っていきました。享年12歳でまだ若い…お外時代に片目を失いましたが、猫友さんとこで先住猫の熊子さんに可愛がられて立派な体躯な猫さんに育っていました。
引用:猫友さんのお写真から無断引用
だいじの子を看取った飼い主さんもどうか心穏やかに過ごせますように。
コメント
私は太宰治の「畜犬談」が大好きです。
犬好き猫好きに関わらず楽しめる読み物です。
太宰治のネジくれた性格の奥に潜む優しさや気弱さが、犬を対しての姿勢に現れていてとても共感を覚えます。
お暇なら是非読んでみて下さい。
猫乃三時さん、こんにちは。
太宰の「畜犬談」、いいですよねえ…
しかし、犬を怖がる描写がこれでもかというくらい緻密に書かれていて(笑)、
個人的には「さもありなんと私はひとり淋しく首肯している」というところがツボです。
太宰は「グッドバイ」とかはホントに好きで何度も読んでますが、
どうすればあんなに哀しいのにユーモアのある文を書けるのか…