腎不全に皮下輸液は不可欠
シニア期に入って皮下点滴による輸液が日常になってしまった三兄妹。状態が悪くなると、毎日のように通院して輸液してもらってました。
若いころは、「首の後ろを摘まんで皮がもとに戻りにくければ脱水」というやり方でチェックしていましたが、脱水もベテランの領域になっている今ではもう全然もとに戻ってくれません…むしろ、もとに戻ることがありません。
以前は輸液をすると、皮膚の下に輸液の瘤みたいなのが出来ていましたが、加齢や腎不全で痩せてしまって筋肉が落ちてしまってからは、輸液をしても瘤は出来ずにお腹の下に溜まるようになります。少し前は、後ろ脚の片方に輸液が溜まり、片方の足が2倍くらいに膨らんでしまったことがありました。さすがに脚の末端に溜まった輸液は吸収に時間がかかりました。
次男猫も、以前は10日に1回程度だった皮下輸液の間隔が、腎不全の進行に伴って、週1になり、週2になり…2日に1回や毎日になるとさすがに通院の負担が大きくなり、自宅輸液に切り替えました。
しかし、この皮下点滴という行為、あくまで「脱水による全身症状」の改善が目的です。輸液そのもので腎不全が良くなるものではありません。
皮下輸液の目的
腎不全の猫に皮下輸液をする目的とは、補水による「脱水状態の改善」に尽きます。結果としては脱水時の腎臓の負荷を減らす効果も得られますが、とにかく脱水しているといいことが何もないので、とにかく身体の中の水分量を増やすことが最大の目的です。
学術論文「慢性腎臓疾患における皮下輸液」(2013年 長江秀之 ナガエ動物病院院長,織間博光 日本獣医生命科学大学名誉教授 特別寄稿)にも、はっきりそういう風に書かれてます。
CKD における皮下輸液の目的は「脱水を継続させない事」であり,開始時期は血液データやIRIS の分類に頼るのではなく「脱水状況・水和状況」で判断するべきであると考えられる。すなわち「自力で経口的に水分を摂取しても,自力では水和状態や電解質・酸塩基平衡を維持できなくなった段階で皮下輸液を開始して脱水を防ぐ」ことが皮下輸液の目的であり,その時期が開始時期であると考えられる。逆に脱水も尿毒症もない CKD に輸液の必要性はないと考えられる。
※ たけ注記 「CKD=Chronic Kidney Disease、慢性腎疾患」
「輸液すれば腎臓が良くなる」ということであれば、どれだけいいかと思うのですが…。
脱水症状とは…
猫に脱水のツラさを聞いても仕方ないので、人間の脱水症状を例に考えてみます。
軽症の脱水症
普段より多量に汗をかく、喉が渇く、めまい、吐き気、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮、尿量減少
中等度の脱水症
吐き気、全身脱力感、動きが鈍くなる、皮膚の紅潮化、疲労および嗜眠状態になる、感情が鈍磨したりいらいらしたり不安定になる、無関心になる、手足のふるえ、ふらつき、頭痛、体温上昇、脈拍・呼吸の上昇及び呼吸困難、幻覚、めまい、言語不明瞭、精神錯乱
重症の脱水症
筋痙攣、失神、舌の膨張やしびれ、不眠、腎機能不全による尿量減少もしくは消失、飲み込み困難、皮膚乾燥及び感覚がなくなる、目の前が暗くなる、目がくぼむ、聴力損失等
脱水が改善すれば飲水も回復!
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